

12話 盗むトップアスリート
「人の言うこうとよく聞き、素直で教えられることが好きな選手」は
伸びない。
これは、これまでたくさんのスポーツ選手を担当してきたボクの印象
です。
学ぶ姿勢は必要ない、という意味ではありません。自分一人の努力と
考えだけで、
世界のトップに立つような成功を望むことは現実的ではないでしょう。
その道の達人とは、自分以外のさまざまな分野の人たちからサポート受
け、ヒントをもらい吸収し、咀嚼し、それを自分の血肉と変えて戦うこ
とで目的を達成しているはずです。おそらくトッププレーヤーになれば
なるほどこの傾向は強く、彼らのどん欲な吸収力にいつも感心させられ
てきました。
教えられる≠フではなく、彼らは盗んでいる≠フです。これまで
ボクが接してきたトップクラスのアスリート達の共通才能の一つに、こ
の盗む力≠ェあります。
彼らは受け身になって教えられるのではなく、新たな情報やメソッド
を自分の中に取り込んで行く過程の中で、「おやっ、コレはどこかで出
会ったことのある感覚だぞ」とか、「コレなら自分の技術にできるなあ」
といった感じで、新しいやり方を自分本位の状態にまで変換させ、しば
らくすると、それがあたかも元から自分のやり方だったかのように盗み、
取り込んでしまうことの上手な吸収達人≠スちなのです。